―出航してから約1時間―
「はぁ〜」
どんどん遠くなっていく港を眺めながら、ウェルは大きなため息をついた。
「なんやぁでっかいため息ついて。どーかしたんかぁ?」
後ろから、ラルドが寄ってくる。
すると
「悩み事でもあるんじゃないの?ほっとけば―?」
すでに船室でくつろいでるケティアが、浮布の手入れをしながら言った。
「ケティアおまえなぁ、もちっと人に優しくしたらどや?
そんなんやから友達も出来ない…」
「大きなお世話だよ。」
ラルドはケティアに杖をつきつけられて、黙った。
「なぁ、ところでこの船何処に向かってるんだ?」
さりげなくウェルは思った事を言う。
『………………』
3人の間に奇妙な沈黙・…
「もしかして…誰も知らないの…?」
「もちろん!」
…とでも言うように2人はうなづく。
「……!!!」
ウェルの頭の中は後悔でいっぱいになった。
「って言うのは、冗談や。」
横目で見るラルド。
「当たりまえやろ、こっちの演技に、辛気臭い顔しくさって、
自分、頼りにならんな〜〜。」
「ちょっ、そんな顔しないでよ〜〜。ウェル!!お詫びに、僕のすっばらしい推理を教えてあげるから。」
ケティアをにらむウェルの表情が明るくなる。
「推理??」
「まあ、聞いてよ。」
「うちの村の伝説、
世界のどこかに浮かんでいる蒼の島、、これって
いきなり、変なんだよね。わかる?」
「えっぇっ」
うろたえる、ウェル。
頭脳労働は、苦手のようだ。
「まずね、島が水に浮かぶ訳ないでしょ。島がぷかぷか浮いていたら、どんどん崩れていっちゃうんだから。
それにね、地図に載っていな
い、って言うのも、何か変でしょ。
島って言うのは、海に囲まれて
いる陸地なわけで、これだけ、航海術が発達しているのに、
書けない、
書かない陸地って言うことになるんだから。
それに、わざわざ、村の伝説って言うところが、うそ臭すぎるよね。
だけど、うちの村だけの海の守り神の像、あれを思い出してみて。」
「ああ、それくらい、俺にもわかる。
クジラの上の、杯をかかげる
女神像で両肩に4羽の鳥がとまっているんだよな。」
「せいか〜い。それでね。僕は、思うんだけど、南の草原って言うのは
世界最大のラーク草原で、
北の森って言うのは、グレイの森だと思うんだ。
その陸地をわける大洋が、渡り鳥ドリムテルゥーの渡りのコースだから
そのコース上に、蒼の島があるんだと思うんだよ。
それも、クジラの上の島じゃありきたりだから、ひょっとしたら、
空を飛ぶ( っていうか、浮く )城とかね。」
「おおおおっ〜〜」
いきなり、ウェルが叫ぶ。
「すごいよ。完璧だよ。
天才、頭良い〜〜〜。」
うきうきして、ウェルは、バク転、側転をする。
「(うゎ〜〜単純。)でね。この舟、渡り前のドリムテルゥーのとどまっているミスルの町に向かっているから、
まずは、
そこで、情報収集って言うのはどう?」
「よぉ〜〜し、そうしよう。」
ウェルが、ニコニコして言う。
「わいにも、何かべしゃらせ〜〜い。」
つっこみを入れる ラルド。
ウェルはさっきのケティアの”推理”を聞いて、”推理”を聞く前とはまったく違い、
これからが楽しみでしょうがないという顔をしている。
鼻歌なんかも歌うほど。
「単純だね…。」
ひそひそ声でケティアは言う。
「うんうん…。まだ本当かどうかもわからへんのにな…。」
ラルドもひそひそ声で言う。
「あっ!」
いきなりウェルが大きな声をあげた。
「どうしたの?」
「ほら!あれ見て!あれってさっきケティアが言ってた…なんだっけ?」
「えっと…。」
「そんなこと気にせんでいいやろ!?わい腹がへってしもうて…。」
地図をさがしているケティアを無視してラルドが言った。
「あの島は…。」
「俺も腹へったー。」
今度はウェルまでもがケティアを無視した。
「…もうわかったよ…。じゃあついたらまず腹ごしらえしよう…。」
「やったー!」
こうして船を降りた3人は食事をする所をさがすのだった。
さぁて…ここは港。
ウェルがろくに行き先も確かめずに飛び乗った船は、ケティアの言った通りミスルの町行きだったが、
その前にどうやらここでしばらく停泊するらしく、乗客だけでなく、船員達もぞろぞろと船を下り始める。
「どうやらここはカッサって港みたいだね」
がさがさと地図を広げて現在地を確認するケティア。
だが、2人は適当な相づちでそれに答えると、さっさと目的の建物へと歩を進める。
…目的…それはもちろん「食事」だ。
「ねぇねぇ、船の出航の時間、確かめておいた方が…」
すたすたと通りを歩くウェルとラルドに、ケティアが心配そうに訪ねるが…全く聞く耳を持たない。
腹が減ってそれどころではないらしい…とケティアはため息をついた。
食堂で何かしら食べれば、気持ちも落ちつくだろう、とあきらめの心境で考える。
ついでに最近のミスルの様子なんかも聞けるといいか…。
食堂は各地から船に乗ってきた乗客であふれているはず。
なにかおもしろい話の一つでも聞けるかもしれない。
ケティアはそう自分に言い聞かせて、2人の後を追うべく、ふわふわと空に浮き上がる。
なにより、自分もお腹が減っているのだ。
自分の大好物のミルクプディングがあるといいな…。
甘くってぷるぷるしている好物の姿を思い描いて、思わず笑みをもらした…そのとき。
突然、何かが足を強く引っ張った。
「…!!」
つんのめって地面に衝突しそうになるケティアの身体を、今度は横から伸びてきた手が
がしりとつかむ。
ごつごつとした厳つい手の感触。
横抱きに細い路地に引きずり込まれて、何かを頭から被せられる。
強引な手つきから、これが冗談ではすまない事態だとケティアは叫び声をあげようと…
次の瞬間、強い眩暈に地面に崩れ落ちる。
…何…?何が起こったの…??
もうろうと霞ゆく視界の中、彼が最後に見たのは、
冷たい視線で自分を見下ろす、長身の男の姿だった…。
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かんとりー:蒼の島総合第2弾―!今回はゲストにみゅうきぃをお呼びしましたぁ!
みゅうきぃ:(パパ――ン!)こんにちはー
かんとりー:コピー作業有難う。ご苦労サマー
みゅうきぃ:なんかお話らしくなってきて嬉しいよねー。読み返しちゃったよ、全部。
かんとりー:お客さんも増えて…ジャンルがオリジナルと化しているよね。
みゅうきぃ:うーん、もうなんかよろずだねι
かんとりー:まぁ、楽しいからよし!んじゃあ、今後ともよろしくー!
みゅうきぃ:はーい、じゃあねー。