蒼の島 〜夢、達成!?〜

 

―― ウェルがのびている間、リアと、リリアが話している。――
「えっ、あなた、リア=ローザって言う名前なの?私、リリア=シェラーっていうの。
名前、同じぽっいね。(^−^) ん〜〜〜。それじゃ。リザって呼んでも良い?」
「うん。それじゃ〜〜。私は、リッシュ?リラー?ん〜〜〜…」
「私、リッシュがいい〜〜。 」
「それじゃ、決まりね。リザ!」
「こちらこそ、よろしくね。リッシュ」
「…あんなー、リアちゃん。いや〜〜。わいのこと、な〜〜 らるるん って〜〜」
「何言っているのラルド。男は、はっきりと自己紹介するの!」
ケティアが後ろからたたく。

自己紹介、ラルド。
「わいはラルド。
ラルド=ドゥルフォールっちゅーんや」
自己紹介、セイ。
「私はセイ=ソグラスと申します。神官戦士ですので、怪我の治癒等はお任せください」
「それよりウェルさん、大丈夫かなぁ…」
リアがのびてしまったウェルを心配そうに見やる。
「大丈夫だって。死ぬわけないから」
(死んだら怖いな…っつーかリリアちゃんって、リアちゃんと違って怖いなぁ…)
「ケティア、だっけ?フルネームは?」
リリアが訪ねる。
ケティア=ユウリック
ケティアは嫌そうにに答えた。
「……」
リリアはなぜそんな顔をするのか、全く分からなかったのでぽかんとしてしまう。
(リッシュ、ちょっと機嫌が悪いのよ。あなた、ウェルさんと親しそうだから)
「……??」

「プルプル!」
「ドリィちゃん??」
ウェルがのびているうちに、残り6人は話しこんでいた。
その中でたった今、急にドリィが鳴いたのだ。
「なんや??!」
「プルプル!!」
ドリィはリアの肩からはなれ、窓の方に(ちょっと外が見える。半分以上は海の中だけど)
「……島が…見える……」
リリアは小さくつぶやいた。
考えてもいなかった。
まだ助かっていないということなんて……
「なんや…見たことない島やなぁ…っつーか、見つからんうちにはよ逃げやな!」
「…着いたらすぐに外に出ればいい」
と、カレーテシー。
「出れたら…な。」
いつから起きていたのか、ウェルが割り込む。
「ウェルさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だってリザ」
「リ、リザ??」
「はい」
リアは小さく微笑んだ。

 

「えらい変わった島やなぁ」
船からセイの魔法もあって出られた7人は近くの草葉に入る。
「うん……なんか、不思議な感じがする…懐かしいような…そんな、感じ…」
リアはゆっくりとそう言った。
「懐かしい……??」
リリアはリアの言葉に対し、何もわからなかった。
なにか勘違いかな?とか考える。
「ウェル??」
カレーテシーがさっきから小刻みに震えるウェルに言う。
「…だ…」
「??」

「蒼の島だ!世界のどこかの海に浮かんでる地図にも載ってない蒼の島。
そこの南の草原で太陽の光だけを300と65日浴びた黄金色の鳥のはねと、
北の森で、月光だけを700と30日浴びた銀の木の実。
この二つを手に入れて島の中心にある神殿の聖杯にかかげれば、
不死鳥が現れて、願いを1つ叶えてくれる!」
「ぁ……」
『あんた、まだそんなこと信じてんの?』
そう言おうとして、はっと止める。
ウェルが、今まで見せたことのないような顔をしていたからだ……
「はぁ?じゃ、ここが、蒼の島だっての?」
と、カーレテシー。
「って!こんなに、いきなり見つかるなんて、ありありじゃないの?」
これは、ケティア。
「なにいってんやぁ。偶然にしては、できすぎくん、やないか?」
これって、ギャク?なラルド。
「でも、ここが、ここが、蒼の島なんだよ。俺にもなぜだかわからないけど。でも、でも…」
うろたえはしているけど、真剣に話すウェル。
自分でも、説得力のないことを言っているとわかってはいるが。
でも、なぜか自分の母親から聞いたような錯覚を覚えさせる根拠のない言葉を言っている。
自分でも、不思議だ。

「……あの、ウェルさん。お2人、(リリアを少し見る。)いえ、
ケティアさんと、ラルドさんとの4人は、同じ村で生活していたんですね。」
「そこの村の伝説…そうすると、ウェルさんのお願いって、なんなんですか?
それって、たった一つだと、皆さんのうち、一人だけと言うことになるんですよね…それって…」
心配そうなリア。
「あの、申し訳ありません。今さっきの船から降りてからしばらくたちます。
すぐに、強盗団から逃げ出さないといけないのではないでしょうか?」
冷静に話すセイ君。
「逃げて良いのか?」
それまで黙って話を聞いていたカーレテシーが言葉を放つ。
「お兄ちゃん?」
全員がカーレテシーの方を振り向いた。
「盗賊団は放っておくのか?
こうしている間にもまた珍しい動物が売買されているかもしれないのに。」
淡々と、静かに話すカーレテシー。
しかし、その言葉はウェルの心に重く響く。
「な…なんだよ!ウェルの探していた『蒼の島』がせっかく見つかったんだから…」
ウェルが俯いてしまったのを見て、ケティアが慌ててフォローする。
「一度盗賊団の方を片付けてもう一度ここに来ればいいんじゃない?」
リリアの発言を聞くと、ケティアはリリアの方を睨みつつ言った。
「『蒼の島』がどうして伝説になってると思ってるの?
簡単には見つけられないからなんだよ、
同じ場所に来たからって何回も行けるようなら伝説になんかならないの!」
「ぐ……っ…!」
的を得たケティアの意見に、流石のリリアも返す言葉がないようだ。
「まぁまぁ…」
ラルドが間に入ろうとしたその瞬間…

「戻ろう」
大きくはない、しかしよく響く強い声。
ウェルが顔を上げて全員を見ていた。
「え…!?ウェル…ええんか?せっかく…」
「いいんだ。他人の事はほっといて、自分の願いだけ叶えてもらうなんてやっぱり嫌だし、
このままじゃたとえ伝説通りにしても『蒼の島』は願いを叶えてくれない気がする。」
ウェルはもう一度皆を見渡した。
「だから、戻ろう!」
「…そうね、ドリィちゃんみたいな子がたくさん困っているんだものね」
「っつー事は、リアちゃんみたいな子もたくさん困ってるんやな!」
「解りました、お手伝いさせていただきます」
「まぁ…ウェルが良いって言うんなら僕はかまわないけど?」
「もうっ、あっち行ったりこっち行ったり忙しいわね!」
皆が次々と同意する中、カーレテシーは最後ににやりと笑って言った。
「とりあえず、船で伸びてる奴をたたき起こしてアジトを聞き出さなきゃな」
「ありがとう……」
ウェルは本当に嬉しそうに笑った

 

「うん、夜明け鳥がとびたったね。」
と、山から飛び立つ鳥を見上げて、ケティアは言った。
「カーレテシーさん、僕たちが乗ってきた船が、そろそろ港に着くだろうから、
その前に強盗団を一網打尽にすると良いと思うんだけど。」
ケティアは極めて、真面目に話す。
…と言っても浮巾で浮いていて、空中で寝そべっているから、あまり緊張感はない。
「同感だ。俺達の町の動物誘拐事件の黒幕がアイツらだとすると、今全滅させておかなきゃ、
また、誘拐が繰り返されるからな。だろ、なっ、リア。」
優しく妹に目をむけるカーレテシー。
少しでもニコッってすれば良いのだけれども、それをしないところがカーレテシーの良いところかな。
「うん!。そうそう。」
眼をキラキラさせて、リア。
「そんじゃ、決まりだ。」
「強盗団の乗っている船の先は、海の流れからして、あっちだな。(遠くに目をむけるカーレテシー。)
で、そっちに、港がある。船の中の奴等が強盗団のボスなら、そこで倒す。
下っ端なら、取引きのところを見つけるっと。それで良いか?」
「うん、船の人たち、6人しかいないんだもんね。先に船を襲撃したほうがもんね。良いと思うよ。」
皆を見るケティア。
どーやらそれで良い様だ。

つられて、みな走り出す。
先頭のカーレテシーは、港に向かうようだ。
「(走りながら)それでよ。二手に分かれたほうが良いと思うんだよ。船と、取引きの方とをな。
俺と、セイな。それと、お前(ケティアのこと。)が船でどーだ。」
「うんうん。実力順だね。」
ケティアひとりだけ頬ずえついて、飛んでいるうなずく。
「わかりました。お任せください。」
セイくん。寡黙だけど、頼りになる言葉。
「リリア。お前のほう、情報収集していろ。無理するなよ。」
走りながら、と言っても、リアを肩車しているから、頭越しに話す。
(あの人、仕切るわね〜。でも、これが最良の選択だよね。私たちじゃ、ちょっと、危ないみたいだし。)
リリアはカーレテシーの考えを尊敬半分と、ムカツキ半分で、聞いていた。

 

――― 町が見えてきた。船の汽笛が聞こえる。そこで二手に分かれた。
だがしかし、ウェル、ラルド、リリア、リア、ドリィの単純おおざっぱ考えなしの4人と一匹パーティでは、
トラブルが起ることは確実であった。

 

―――ケティア、カーレテシー、セイの三人、港の船の前。―――
「おい、アイツラの船まだ、動物をおろしていないようだな。
俺と、ケティアが切り込んで、セイが動物、盗品をワープさせる、こんなもんで良いよな。」とカーレテシー。
「わかりました。しかし、この船の規模では呪文の詠唱に10分はかかります。できますか?」
淡々と話すセイ。
「うん。そのくらい大丈夫だよ。てゆーか、僕たち二人だから大丈夫なんだよね。」
ケティア。
「そんなわけだ。そんじゃ、いくぜ!!」
カーレテシーとケティアが駆け出す。
行動の早い3人であった。

 

―――こちらウェル以下4人と一匹、港に向かう道をうろうろしている。―――
「だから、そんな考えなしじゃあぶないだろ。」ウェル。
「なによ。意気地なしね。男らしくないわよ。」リリア。
「だから、ここらの人たち片っ端から聞いて回るなんて、意味ないしホントのことわからないだろ。」ウェル。
「やってみなきゃわからないわよ。」リリア。
少しヒステリーになっている。
「全く仲がええこって、まるで、兄弟みたいやなぁ。そー思うやろ。リアちゃん。」
隣でそんな会話を聞いているラルド。
「う、、うん。」
複雑そうに見ているリア。

ドドドドドッ
「 おいっ、あいつ。あの女の子じゃないか、写真の。
それに、ドリムテルゥーもいるぞ。」
そう言って、数人の男達が駆け込んできた。
いかにも悪者の顔つきをしている。
「お前達、アイツら、
エデンのグループ…じゃないよな。まぁどっちでも良い。
その女と鳥はもらっていくぞ。文句はねーな。
リーダー格の不良そうな長髪が脅しを込めて言う。
「なんだって、ギロッ(ウェルとリリアが二人して長髪をにらんだ。)」
二人のイライラが頂点に達していた時に現れた謎の男達。
ドリィとリッシュをねらうということは、強盗団とは別のグループのようだが…
しかし、ウェルとリリアの不満のために、この後、ボコボコになるのはわかりきっていることだった。

 

「あぁ〜♪すっっっきりしたっ!」
「やっぱりイライラをためるのって良くないよな!」
ウェルとリリアは、すっかりのびきった謎の男達の真ん中でそう言い放った。
「…でも…この人たち、一体何者なのかしら…?」
二人の猛攻撃を、ポカンと見つめていたリアがつぶやく。
「そうやなぁ…ドリィだけでなくリリアまで狙われるっちゅう事は…エデンとは別口やな」
同じく、しばらく唖然としていたラルドも、足元に倒れていた男を蹴飛ばしつつそう言った。
「リリアも珍しい動物だと思われてんじゃねぇの〜?」
にやりと笑って口走るウェルだが…
「何か言ったかしら?」
にっこりと笑うリリアを前に、即座に平謝りする羽目に陥っていた。

「あの…さっきこの人、『写真の』って言ったわよね。
って事は、リッシュの写真を見て、捕まえようと思ったって事じゃない?」
リアがおずおずと口を挟む。
「そやな!ほんなら、こいつの何処かに…」
リアの言葉を聞いて、早速リーダーらしき男の内ポケットやら荷物やらを探り出すラルド。
「私の写真…?何でそんな物こいつらが…」
「あったで!…?…って…これ…」
男のズボンのポケットから引っ張り出した紙を見て、ラルドは言葉をなくす。
「あったの?どれ……!!」
同じく覗きこんだリアも、絶句してしまった。
「なによぉ?二人して…」
リリアはラルドの手からその紙を取り上げ、ウェルも一緒に覗きこむ。
「…え…え…えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
二人は同時に叫んでいた。
「な…何ですってぇ…?」

その紙は、間違いなく指名手配書。
そしてその中央の写真に写っている少女は、これまた間違いなくリリアだったのだ…

 

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