「リリアお前一体何やったんだ?誰にも言わないから話してみろ」
―ごすっ…
ウェルの脳天にリリアの攻撃がヒットした。
「あんた何言ってんのよ!それでも私の幼なじみ!?」
「つ〜…じゃぁこの指名手配書はなんなんだよ!?」
よほど攻撃が効いたのかウェルは少し涙目になっている
「そんなもん私が知るわけないでしょ!」
ギャーギャーとウェルとリリアが口論を繰り広げる後ろで、リアがその手配書を見て何かに気付いた。
「これ……リッシュじゃないわ…」
リアの言葉にウェルとリリアの動きが止まった
「え?どうゆうことや?リアちゃん」
「ほら、ここの名前の所見て」
リアの指差した先を3人はじーっと見つめる
そこにはしっかりとこう記されていた
”―弓使いのレイオウ―”
ちなみに、リリアの武器は長刀だ。
「レイオウ……??」
リリアが人差し指をあごに当てながら考え出した。
「ん〜、でもごっつぅ似てるなぁ……」
ラルドがリアからその手配書をとる。
「ま、性格的にはこの子の方がいいんじゃないか?」
「うふふ♪」
「でもリリアのが美人だなぁι」
ウェルは御世辞をかわす。
「そーね。」
リリアがラルドの手を引っ叩いて手配書を奪った。
「あいつらがこの島で探してるってことは、この島にいるんだろうし…
捕まえて一発ぶちかまそうかしらっ?なんかこの子のせいであたし悪人扱いだし…」
そう言ってリリアはウェルを見やる。
ウェルは愛想笑いをしながら首を縦に振るのだった。
「そうと決まったら出発だ。」
森の方に向かっててくてくと歩き出した。
それに続いてラルド、ウェル、リア。
リリアはケティアが動かないのを見て、
「どうしたの?」
と後戻りしてきた。
「リリアと僕って、以前、会ったことがあるよね…?」
「…??同じ街出身だし、あるんじゃない?まぁ、あたしは全く記憶にないけど……」
「リリアって、記憶が無くなったって言ってたよねっ?」
「うん。まぁ…」
「その、記憶がない時なんだけど、僕と、会ってなかった…?」
「??ん〜、さぁ。」
「あのねっ、誰にも言わないんでほしいんだけど…」
「??」
「人には誰にでも、分身を作ることができるんだ…」
「はぁ?」
「その分身は、作った方がが主心だから心や感情はないんだけど、
主心の方ははその分身の心を感じることができるんだ」
「何が言いたいの?」
「リリアの分身が、その、レイオウじゃないかって……」
「何言ってるのよ。分身なんてあるわけないじゃない」
リリアはそう言って森の方に向かった。
その後姿を見ながら、ケティアはその場に座り込むのだった。
「リリアなら、信じてくれると思ってたのに……リリアなら…」
「そこのぼうず、さっきの女と知り合いか?」
聞いたことのない声がした。
次の瞬間、ケティアは深い海の底に意識が沈んでいくのを感じた…
〜〜〜漆黒の闇の中から、不気味な声が聞こえる。〜〜〜
「ふっ、こうでもしないと私の願いがかなえられないとはな。。」
そう話す青年は、イスにもたれかかって、紅い眼を光らせていた。
「すでに、現存するドリムテルゥーのほとんどは捕獲しています。
それを飼育できるものたちも、じきに全て集まるでしょう。」
今度は、蒼い眼を持つ少年が話す。
「しかし、誘拐とは、私の美学に反するのだが…」紅い眼。
「小事にこだわるものは、大事を見失いますよ。」蒼い眼。
「あと、しばらくです。私たちの願いがかなうのは…」
蒼い眼が言う。
その言葉には、自信に満ちていた。
―――こちら、ウェル一行。―――
「あれっ、ケティアがいない。リリア、ケティアは?」ウェル。
「えっえっ…今さっき、話していたのに…」
―――カーレテシー 一行―――
「ケティアの奴…急にいなくなりやがって何考えてん…だっ!」
カーレテシーは、向かってくる強盗団をなぎ払いながらこぼした。
「しきりにリリアさん達の方を気にしてましたからね…あちらに向かったんでしょうかっ?」
セイも、同じ様に簡易な魔法で敵を退けていた。
「なぁ〜にが『ボク達二人だから大丈夫』だよ!俺一人でこいつ等全部やれってか!?
望む所だぜ、ちくしょー!!」
カーレテシーは、一見ヤケになっているように見える…が、その太刀筋は的確だった。
しかし、とにかく数が違いすぎる。
「無茶です、カーレテシーさん、私もお手伝いします。
まずは敵を一通り片付けてから、盗品や動物たちを運びましょう!」
「そうだな…っ!」
カーレテシーは悔しそうに頷いた。
数分後…船の中に立っている人物は、カーレテシーとセイだけになっていた.
大量にいた強盗団は、全てこの二人によって倒されたのだった。
強盗団の三分の一は眠っている。
「に…しても、お前の魔法って凄いな。」
と、カーテレシーが呟く。
「範囲の大きい魔法が使えるようになっただけです」
セイはそう返すが…
「何故いきなりそんな魔法を…」
「私の杖をみつけたからです」
そう、セイの持っている杖は強力な魔力増幅器でもあるのだ。
ついでに呪文の詠唱時間も殆ど無くてすむとゆう…
魔法使いにとってはかなりの『お宝』なのである。
「さて、盗品や動物達を運びましょう。」
「そうだな。ケティアを捜すのはその後だ。」
「な〜〜んでボクはよく捕まるのかなぁ…」
深い森の洞窟の中、そこにケティアは捕らえられていた。
ケティアをさらったのはおそらくリリアを狙った(そして返り討ちにあった)強盗団に間違いないだろう。
「第一人質役って言うのはヒロインがやるものであって
僕みたいなサポートキャラがやるものじゃないんだよ」
ぶつぶつと文句を言いながらわずかに動く後ろ手で『印』を組み詠唱を始めた。
「頭ぁ、あのガキなんなんですか?」
蝋燭しかついていない部屋でいかにもな雑魚顔をした青年が玉座(!?)に座っている男(頭)に向かって話す。
「あいつか…?あいつはあの賞金首の女と一緒にいたんでな…利用させてもらおうと…」
ドカ―――――――ン!!!
頭の言葉が終わらないうちに奥から大爆発が起こり洞窟が煙に包まれた。
「なっなっなっ…何なんすかぁこれわっ!」
突然の出来事に洞窟内の者の殆どがパニック状態。
我先に、と出口に向かって走り出している。
「えぇぃっ落ち着けっ!ちくしょーあのガキ何しやがったぁ」
頭は部下達をかきわけ爆発の元、ケティアのいる部屋へ向かっていった……
〜〜〜 ウェル達、4人と1匹
〜〜〜
「わっ、びっくりした、ケティア!なに、いきなり出てくるの。」
リリアが尻餅をつく。それは、いきなりケティアが空中に現れたからだ。
「ねっ、みんな、驚かないで聞いてほしいんだけど、」
「おどろくわい。何おまえ、浮巾で浮いとるのに、空中でつっ立っとんのや!
いつもみたいに、寝そべってだらけとけぃ」
と、ラルドがつっこみを入れると、ラルドの手がケティアの体を突き抜けていってしまった。
「わりゃ??」
「ねっ、わざとらしい説明を入れてくれたけど、聞いてほしいんだ。
今の僕はね、分身なんだ。主心の方がさらわれているの助けてほしいんだ。」
「へっ、それじゃ、さっきいきなり消えてしもうたのは、」ラルド。
「そう、僕だよ。」
と、浮巾を巻きながら、立ったまま浮いているケティアが話す。
まるで、首吊り自殺の人と話しているようだ。
「とにかく、僕についてきて、セイさん達には、もう言っているから」
「ねっねっ、ケティア君。」
手招きしてリリア。
「触れないのよね〜〜〜。」
といって、ケティアのほっぺにキスしたリリアの唇は、すり抜けてしまった…
「ああっ!!!
ケティア〜〜。ビンチなんだろ〜〜。助けてやるから、案内しろ〜〜〜。」
そういって、リリアの手を引いて猛然と走り出すウェル。
追いついていくケティアの分身、それと、ラルド。リア。それについていくドリィ。
ウェル君。何を怒っているのかな〜〜〜。
―――カーレテシーと、セイ―――
「よしっ!っと、」
カーレテシーが、強盗団の最後の一人の両手を縛り上げる。
「カーレテシーさん。今、この町の警察に連絡を入れました。
言われたとおり、賞金は、貴方の名前で受け取れますよ。
」
「ああ、サンキュ。それじゃあ、さっきのケティアの分身の言ったとこに行くか。
そこに行けば、コイツらの頭に会えるかもしれないからな」
「あの、その宝石などは、持っていっては…その…」
カーレテシーのポケットには、強盗団から奪った宝石がいっぱいだ。
「いいんだよ。どの道、警察に没収、って事になれば、結局
政治家の遊びの金くらいにしかならねーんだから。」
「あの、聞いても良いですか?
そんなにお金を貯めて、何に使うのですか?
危ないことをすれば、妹さんもよくは、思わないでしょう。」
「……」
カーレテシー、うつむいて、
「なぁ、セイ。世の中、不公平なもので、
幸せってものは最小限の金を持っていなければ、手に入らないんだよ。」
「俺らには、親ってものがいないんだ。そして、俺は、このとおり、剣を振るうしか脳がない人間。
リアの為には、こうするしか……そういうわけだ。」
「わかりました。それが貴方の出した結論なんですね。
それが、貴方の一番の願い、たった一つの願いなんですね。」
「なっ……」
カーレテシー表情こわばる。
「はははっ、その顔でわかりましたよ。それでは行きますか。転移魔法。行きますよ。」
セイが呪文を唱えると、まばゆい光が二人を包み、景色が歪んだと思うと二人の姿は、忽然と消えた。
相手がセイでなければ話さなかったであろうカーレテシーの
本音が垣間見たひとときであった。
「カーレテシー、セイ!」
ウェルは、ケティアの分身について行った先で、カーレテシーとセイの姿を見つける。
ケティアの分身は、目的地に近づいた所で消えてしまっていた。
「ウェルさん、そちらも無事な様ですね」
にっこりと笑って答えるセイに、ウェルは微笑み返すと、
「でも、僕達は言われた事は実行できなかったけどね」
と、苦笑した。
「言われた事?」
「何かあったっけ?」
ラルドとリリアが顔を見合わせる。
「わ…忘れてたの…?ι」
「盗賊団の取引の現場を押さえるってやつだよ!!」
リアとウェルが飽きれたように続けて発言するが…
「あぁ、そんな事も言うとったなあ」
「あたしの分身騒ぎですーっかり、忘れてたわー」
のほほんと笑う二人…。
「それなんだけどな、盗まれた動物や金品は一部を除いて元の位置に返した。」
「一部を除いて?」
「まあ、いいから、でな…」
ウェルの疑問をさらりとかわし、説明を続けるカーレテシー。
「珍しい動物や金品を取引している盗賊団と、賞金稼ぎまがいの事をやってる奴らは、多分同じ組織だ」
「ええぇぇ!?」
カーレテシーとセイ以外を除いた全員が驚きの声を上げる。
「ど…どうして解ったの…?」
リアの問いに答えたのはセイだった。
「始めにそうではないかと思ったのは、ケティアさんに話を聞いた時なんですが…
船にいた盗賊を縛り上げる時に問い詰めたら、わりと簡単に話してくれまして」
「なかなか怖かったぞ、セイの脅迫は。笑顔でやるもんだから更に」
「あはは、相手の方々がハッキリしないものですからつい…」
笑顔で話すセイなのだが、ウェルたちはちょっと背筋が寒くなった。
「とにかく、どちらの盗賊団も後ろにあるのは同一の組織です」
「大量の金を溜めてる大きな組織があるらしい、ここもその組織の配下の一つなんだろうがな…」
カーレテシーはちらりとその建物を見て呟いた。
「とりあえずはこの中にいるケティアを助け出さなくちゃいけないんだろ?」
ウェルは全員を見渡して言った。
「盗賊団の事とか、リリアの分身の事も気になるけど…とにかくケティアを助けなくちゃ」
「よっしゃ!じゃま、とにかくここにのり込むか!」
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 00年2月8日UP